空室が埋まらない原因と対策|すぐ実践できる改善ポイントを徹底解説

すぐに試せる工夫から、戦略的な見直しまで徹底網羅


目次

【1】空室が埋まらない理由

【2】どのような部屋が好まれるのか

【3】有効な対策


【1】空室が埋まらない理由

 空室に悩む大家さんから、何度となく寄せられるご相談です。

 私が住む地域の家賃は安いところで1万円台、高いところは50万円超です。

 最も多い賃料帯は5万円台でしょうか。

 仮に、自分の給料が毎月5万円少なかったら、と想像するとゾッとしませんか?空室が2部屋とか3部屋だったら10万、15万です。

 それは、真剣に聞いてきます。


①選ばれる部屋・物件になっていない。内見時の印象が悪い。

 入居希望者が集まらない理由はさまざまですが、選ばれにくい部屋にはいくつかの共通点があります。

 とくに重視すべきなのは、「築年数」ではなく入居希望者の期待に応えられているかどうかです。

 築年数が新しい物件であれば賃料もそれなりになるでしょう。

 入居者の視点は、想像以上に厳しいものです。

 たとえば、カーテンの房掛けが少し欠けている、クロスにわずかな汚れや擦り跡がある、網戸の引き戸が固い……。こうした細かい部分に対しても、新しい物件を選ぶ人ほど高い基準でチェックしています。

 大家さん側としては、問題なく使用できるからいいではないか、とお考えになるお気持ちも分かりますが、借り手目線ではそうではないのです。

 一方で、築年数の古い物件では、こうした指摘は少ない傾向があります。

 しかし、どの物件でも清掃が隅々まで行き届いていない、不具合のある設備品が修理せず放置されているのは論外です。

 判断基準は、きちんと清掃されているかどうかと、設備品が本来の機能を果たせる状態であるかどうかです。

 長期空室のお部屋では、トイレの便器に輪染み(オーリング)ができているケースがあります。中には、「一度清掃業者を入れたのだから責任は果たした」と話す大家さんもいます。

 ですが、借主には関係のない話です。

 室内のチェックが終わったら、外観と敷地全体のチェックをしましょう。

チェックすべき項目(外観・共用部)

・駐車場の白線が消えかかっている

・改造車やパンクした車が放置されている

・自転車が置けないほどバイクに占拠されている

・駐輪場にホコリをかぶったままの放置自転車がある

・吹き溜まりにゴミが溜まり、たばこの吸い殻が散乱している

・ゴミ置き場に何日もゴミが残っている

・雑草が伸び放題になっている

・共用部分の掃除が行き届いていない/蜘蛛の巣がある

・私物(タイヤや段ボールなど)が共用部に積まれている

・通路灯・共用灯が切れたままになっている

・空室の集合ポストにチラシが溜まり、飛び出している

・雨天時、大きな水たまりができて動線が遮られる

これらの複数に該当していれば、内見の段階で候補から除外されるリスクが極めて高いです。


②家賃設定が周辺相場より高い。

 近年は、借主もスマホで簡単に相場を比較できるため、割高な物件は敬遠されます。

 同地域・同間取りの物件が並べられた中で、数千円高いだけで敬遠されるケースが増えています。

 比較されるポイントは、立地、外観、部屋の広さ(帖数)、設備の充実度など様々ですが、やはり最後は家賃です。

月3,000円の差でも…

 わずか月額3,000円の家賃差であっても、例えば家賃4万円の物件であれば、年間36,000円となり1か月分の家賃に相当します。

 このことを伝えると、借主さんはより真剣に比較検討するようになります。

 借主さんの反応は、こちらが予想した通り、かなり真剣に家賃差を考慮して物件を検討されるようになった方が多かった印象です。

安易な値下げにはリスクも

とはいえ、相場に合わせて家賃を下げるだけが正解ではありません。

一度契約した家賃は、賃貸中に上げるのが非常に難しいためです。

・家賃を下げるには合意があれば可能

・上げるには原則、借主の同意が必要

・同意されるケースは極めて稀

そのため、最初に設定した家賃がずっと継続される可能性が高くなります。

 この場合、借主さんが長期間借りてくれたならば大家さんに優位に働きますし、短期間で退去されたならば大家さんに不利になります。

 築年数による賃料の下落を考慮しますと、10年間同じ家賃を支払っている借主の場合、相場より高く支払っている可能性が高くなります。

 賃料変更には双方合意の他に、一定の条件下では一方的に変更可能とする判例もありますが、別の機会に触れることとします。

 あなたが大家業であるならば、競合物件を毎日インターネットをチェックすべきです。

 特に土曜・日曜にはお部屋探しに不動産会社へ見える方が多くなるので、それに備えて事前に不動産会社に相談しておきましょう。

  昔は、不動産会社に足を運ばないと物件情報が得られない仕組みでしたが、現代ではインターネットに掲載されていない物件は、ほぼありません。

 賃貸に限っては、リクルート社のSUUMO(スーモ)に掲載されていない物件は少数派で、あえて掲載されていない物件は大家さんの意向であったり、不動産会社の意向であったりします。

 入居者募集を依頼されている不動産会社側としては、インターネットに掲載しないというのは募集していないのと同義にも等しいので、大家さんと不動産会社の特段の事情がない限りは掲載されているものです。

 


【2】どのような部屋が好まれるのか 

 最終的にお客様に選ばれる部屋というのは、

室内の各所で平均以上の評価を得られる物件』です。

 選ばれにくい部屋の具体例

① 築30年の1K。キッチンは新品だが、クロスが汚れている
② 築35年の3DK。インターホンは最新型だが、洗面台は旧式のまま
③ 築20年の2LDK。全体的に劣化はないが、設備はすべて築当時のまま

このように、部分的にリフォームされていても、トータルで評価が低ければ選ばれにくいのです。

 上記①~③の物件はどうでしょうか。

 ①と②は部分的に設備更新しましたが、その他の部分は現状維持。水回り、クロス、床材、建具、家電設備などと分類した場合、一部分の点数だけ高く、他は低い部屋となり、平均して高くないとなるわけです。

 ③はすべてが平均点以下で、全体的に魅力に欠けます。

 これらは、入居者を付けるのが非常に困難、または相場より低い賃料で募集しなければならない部屋に分類されます。

 これらの物件にご案内したお客様からよく言われる言葉は、『○○はいいんだけれども◇◇がちょっとね…』

「外観は素敵だけれど、室内はちょっと…」

「キッチンはいいけれど、お風呂が古いわね」

「部屋の広さはいいけど、クロスの柄が奇抜すぎる」

 このように、一部の好印象だけでは決め手にならないことが多く、別の物件に流れてしまいます。

 


【3】有効な対策

 空室を解消するには、「戦略的な改善」と「小さな気遣い」の両方が必要です。

 リフォーム・仕様の考え方

万人向け仕様が基本

賃貸は、結婚・転勤・別居・高齢者の見守りなど、実に多様な理由で住まいが選ばれます。
よって、「誰にでも嫌われない」無難で清潔感のある内装が鉄則です。

✔ 改善ポイント

キッチンを新品にするなら、洗面台やユニットバスも検討

床材を張り替えるなら全室まとめて行う

外観よりも、内装に予算を集中投下

築20年を超えたら、水回りの総入れ替えも視野に

その上で、以下を実践すると良い反応が得られる可能性が高くなります。

 A.照明器具の設置

 お客様をお部屋にご案内するのは昼間とは限りません。20時に店舗を出発してお部屋にご案内したケースもあります。

 暗い中、懐中電灯を頼りにお部屋を内覧してもほとんど見えません。『昼間にもう一度内覧させて下さい』となれば良いですが、印象が良くなければ二度目はありません。

 照明器具を設置するなら、当然ながら電力会社との契約をしておき、実際に点灯できる状態で、明るさを確保しましょう。

 B.クロスを工夫

 実際にあった困った物件の例で、男性に好まれやすい物件なのに、クロスがブルーの花柄だった時。

 大家さんの『何か変わったことにチャレンジしたい』という気持ち、よく分かります。

 でも、賃貸物件のクロスは、ホワイト系の無地が大原則です。大家さんの好みは正直どうでもいいのです。

 ワンポイントクロスとは、部屋全体ではなく一面や一部の壁にだけ異なるデザイン・色・素材の壁紙を貼ることで、空間にアクセントを加えるインテリア手法です。この場合も、柄物ではなく無地を選ぶのが無難です。

 既に柄物クロスを貼ってしまった場合は、クロスの上からさらに上貼りできるクロスがありますので、試してみるのも良い手です。

C.芳香剤を玄関に

 非常に効果的でありながら、実践している大家さんはごく一部。

 玄関を開けた瞬間の良い香りで、「気遣いのできる管理」「入居後の安心感」が伝わります。

まとめ|空室対策は“見せ方”と“心配り”で決まる

空室対策に魔法のような特効薬はありません。
しかし、日々の管理と気遣い、選ばれるための視点を持つことで、確実に反響は変わってきます。

「高額リフォーム」よりも、「印象の良さ」と「全体のバランス」が鍵です。
本記事を参考に、ぜひ空室対策の第一歩を踏み出してみてください。


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