希少物件が出やすい時期と、来店のタイミングを徹底解説
不動産営業をしていた頃、お客様から最も多くいただいたご質問のひとつです。
目次
【1】賃貸物件が増えるのはいつ?入退去が多い時期とは
【2】引っ越し希望日の決め方と、物件探しにかかる日数の目安
【3】不動産屋さんに行くベストなタイミングと注意点
【1】時期によって物件数が異なる?
賃貸の営業職の頃、両親に言われた印象的な一言がありました。
『そんなに毎日、部屋探しに来る人がいるの?』
実際に、毎日多くのお客様がご来店いただいていました。
私が勤めていたのは、全国チェーン展開の大手不動産会社で、誰もが一度は耳にしたことのある店名でした。高額な広告宣伝費をかけてお客様を呼び込んでいましたから、毎日様々な問合せの電話が鳴り、ウェブからも多数ありました。
そもそも、こうした需要がなければ、不動産業界がここまで発展することもなかったはずです。
契約が多いということは、同時に退去も多いということです。
では、その入退去が多い時期はいつなのでしょうか。

率直に申し上げると、1~3月と7~8月です。経験上、この時期に物件が出やすいです。
では、なぜ1〜3月と7〜8月に物件が多く出るのでしょうか。全国的に見ると、転勤を伴う異動がこの時期に集中する理由は明確です。年末年始・春休み・夏休みといった長期休暇に合わせているからです。
転勤される方の中にはお子様がいらっしゃるご家庭も多く、企業側としても、転校による学業への影響を最小限に抑えるべく、長期休暇中の引っ越しを推奨する傾向があります。
体感としては、通常月と比べて夏休み期間中は約1.5倍、1~3月は2倍以上の動きがありました。
転勤者でなくとも、年度変わりは入学・就職といった出来事もありますしね。
物件の動きについて、もう少し詳しく説明しますと、いわゆる転勤シーズンは通常月には滅多に情報が出ない物件の退去があるということです。
転勤者には企業から家賃補助などがある場合が多く、平均よりやや高めの物件であったり、すぐに部屋を決めて契約しなければいけないという状況もあったりで、インターネットに掲載する前に契約となる場合もあり、そのような物件の退去がありますと普段は市場に出てこないような希少な物件に出会えるチャンスもあります。
【2】引っ越し希望日は、いつ?
不動産会社に行って、内覧して、契約して、鍵を受け取るという一連の流れを数日で完結させることは稀です。
週に1〜2日の休みがある方が多いかと思いますが、一般的なお部屋探しの流れは以下の通りです。
【訪店1回目】物件の相談・内覧
【訪店2回目】契約内容の説明・書類の受領
【訪店3回目】契約書の提出・契約金の支払い
【訪店4回目】鍵の受け取り
4回目に不動産会社に足を運んだ時にやっと鍵を受領できるのです。
訪店と訪店の間隔は約1週間程度。不動産会社側ではその間に、審査の手続き、契約準備、室内チェック、鍵交換の手配などを進めますので、通常の段取りで約1か月かかります。
お急ぎの方には、最短で数日から2週間程度でのご対応もしておりました。
中には、午前中にお部屋探しと契約を行い、午後には鍵渡しまで完了するという、1日で全て完了するケースもありました。
逆算して行動することが非常に大切です。そうしないと、良い物件に出会えないだけでなく、今後の生活にも影響を及ぼす可能性があります。

引っ越し予定日の1か月半〜2か月前には、実際に不動産屋さんへ行くのが理想です。
その上で、事前にやっておくべきことがあります。
A.不動産屋さんに行く2か月前
インターネットで物件検索を行いましょう。不動産会社で物件の説明を受ける際、比較材料がないと結論が出ずに迷い続けてしまいます。
3〜5件ほど候補を挙げておくと、実際の訪問時にも比較しやすく、スムーズな判断につながります。

B.物件を内覧する日
おすすめは、3物件程度の内覧です。1件だけ見て即決される方もいらっしゃいましたが、それは事前にかなり調べて結論を出していた場合です。
物件数が増えるほど満足度も上がりますが、内容を混同しがちです。立ったままメモが取れるバインダーを持参し、各物件の気になるポイントをメモしておくとよいでしょう。
事務所に戻った際に、気になる点を確認するとスムーズです。

C.物件が決まったら
引っ越し業者に見積もりを依頼。この際、複数社を同時に呼ばないのがポイントです。
1時間ほど時間差をつけて、3社程度を個別に呼ぶのが理想です。サービス内容を比較するにはこの方法が最も確実です。

D.引っ越し日の1週間前
電気・水道・ガス・固定電話・インターネットの申し込みを行いましょう。
特にインターネットについては、1か月前には申し込みを済ませたいところです。撤去・設置に立ち合いが必要な場合もあるため、早めの段取りをおすすめします。

【3】いつ不動産屋さんに行けば良い?
ここまでで、物件が多くなる時期や契約までの流れをご説明してきました。
「じゃあ、3月下旬に引っ越したいから、2月中旬から探し始めようかな」
そう考える方も多いかと思います。それでも問題ありませんが、いくつか注意点があります。
A.物件確保の競争が激しい。
1~3月は物件の動きが非常に激しく、3月末までに引っ越せる物件というのは、1月末までに解約予告されている物件が中心となります。
私の住む地域では、「解約予告は退去する月の前月末までに行う」「退去月の家賃は日割りせず、1か月分かかる」という契約が一般的です。
2月下旬に解約申し入れをした場合、3月末まで家賃が発生し、退去は3月下旬になります。
その物件を再募集するには、清掃や修繕の期間も必要ですので、入居可能となるのは4月中旬以降という傾向があります。
3月中に引っ越したいのであれば、2月上旬には不動産屋さんに行き、2月末退去予定の物件と現空き物件を検討し、その場で判断する必要があります。

3月に入ってから動き始めると、すでに入居できる物件数が減少しており、スピード感と決断力が求められます。
特に転勤される方の多くは県外からお越しになり、その日のうちに物件を決めて帰らなければならない事情があるため、内覧後に結論を一日先延ばしにしただけで、翌日にはその物件が成約済みとなっていることも珍しくありません。
物件を見ずに契約って、難しいものです。不動産屋さんも退去予定物件の室内の状態までは把握できていない場合が多いです。
退去予定物件は内覧できないことも多く、実際に退去後に見に行ってみたら、壁紙がピンク色だった、床が黒色だった、というケースもありました。想像と違う内装で後悔することのないよう、慎重な判断が必要です。
なお、1〜3月の繁忙期に限っては、違約金を支払ってでも、退去時期を早める方もいらっしゃいます。例えば、2月中旬に解約申し出をして、通常であれば3月末解約のところを、2月末に退去される方もいらっしゃいます。そうした場合は、3月中旬の入居が可能になります。

B.引っ越し費用が高額になりやすい
引っ越し費用が最も高額になりやすいのは、3月31日です。次いで、3月30日、3月29日も高額になります。
特に、土日と重なった場合は要注意で、ある業者からは「最高30万円で引き受けたことがある」と聞いたこともあります。
毎月の月末3日間と、各週の土日が高くなりやすい傾向にあることを覚えておきましょう。
引っ越しのタイミングについては、家賃や費用面でも影響が出るため、事前に理解しておくことが大切です。
入居時の家賃は日割り計算となるのが一般的です。例えば、3月15日から入居する場合と、3月31日から入居する場合では、初期費用として約半月分の家賃差が生じます。
「まだ部屋を使わないから」と入居時期を3月下旬に遅らせると、日割り家賃の節約分以上に引っ越し費用が高額になる可能性があるため、慎重な検討が必要です。

このように、引っ越しにはそれぞれのご事情がありますが、希少な物件をお探しの方には、転勤シーズンを狙うことをおすすめします。
そうでなければ、平常月にゆっくりと探す方が選択肢も広がり、落ち着いて比較検討できるでしょう。
本記事では、賃貸物件探しのベストタイミングと、その際に押さえておくべきポイントを、元営業の視点からご紹介しました。
ご自身の生活スタイルやご事情に合わせて、最適なタイミングで理想の住まいに出会えることを願っています。
もし具体的なご相談がある場合は、お近くの不動産会社に早めに相談されることをおすすめします。