入居申し込み前に必読!不動産屋がチェックするポイントと対策

仮押さえの注意点も解説!大家さん目線で知る入居申し込みのチェック項目


目次

【1】入居申し込みとは? 不動産屋が教える具体的な手順

 【1-1】コラム:仮押さえってできるの?

【2】入居申込書でよく求められる情報

【3】入居審査をスムーズに進めるコツと対策

【4】よくある不安Q&A


【1】入居申し込みとは? 不動産屋が教える具体的な手順

入居申し込みとは、大家さんに対して「この物件を契約したい」という意思を正式に伝える行為のことを指します。具体的には、「入居申込書」を記入し、身分証明書の写しを添えて提出することが一般的です。

 大家さんにとって、自分の物件にどのような方が住むのかは非常に重要な関心事です。極端に言えば、住人を家族の一員として迎え入れるような気持ちでいる大家さんもいらっしゃいます。そのため、現在どこにお住まいで、どのようなお仕事をされているのか、また家族構成などの情報を特に気にされることが多いようです。

 なお、申込書を提出したからといって、すぐに契約手続きに進むとは限りません。通常は入居審査を経てから、最終的に契約の可否が判断されます。

 入居申し込みから契約までのおおまかな流れは、以下のとおりです。

① 不動産会社にて申込書の記入と身分証明書のコピーを依頼
  →② 申込書と身分証明書のコピーを不動産会社経由で大家さんへ送付
   →③ 大家さんが、あなたと契約を結ぶかどうかを検討
    →④ 大家さんから不動産会社へ返答
     →⑤ OKなら契約手続きへ、契約を見送る場合はお断りへ


仮押さえ、注意事項

コラム:仮押さえってできるの?

 物件を探しているお客様から「仮押さえはできますか?」と聞かれることがあります。その際、私はむしろ「仮押さえとはどのようなことをイメージされていますか」とお尋ねしています。

 実際のところ、多くのお客様はこの質問に対して、言葉に詰まりながら説明されることが多いです。率直にいえば、「まだ決断できないけれど、いい物件なので無くなってしまうと困る。他の物件も検討したいけれど、その間に確保しておきたい」という心理状態のようです。

 しかし、特に繁忙期には、同じ日に同じ物件を複数のお客様にご案内することも珍しくありません。そんな中で、仮押さえのように物件を保留されると、大家さんにとっても不動産会社にとっても大きな迷惑になってしまいます。

 なぜなら、仮押さえが原因で長期間空室となってしまうケースがあるからです。たとえば、その物件を気に入って申込みをしたいお客様がいても、すでに仮押さえが入っているため二番手の扱いとなり、契約できるかどうかわからない状態になります。そうなると、そのお客様も不安定な状態になるため、別の物件を探さざるを得なくなる場合も多いのです。

 特に転勤などで県外からお部屋探しに来られる方は、限られた時間の中で物件を決めて帰らなければならないケースも多く、仮押さえの入っている物件は敬遠されがちです。

 さらに、一番手の方も二番手の方も結局契約をしなかった場合には、物件が長期間空室となってしまうリスクが生じます。以前の記事でも触れましたが、特に繁忙期の賃貸市場では、物件の空室状況が驚くほど速く変わります。「昨日は空いていたのに、今日になったら決まっていた」というのは、よくある話です。

 また、賃貸物件は同時に複数の不動産会社が取り扱っていることが多いものです。人気物件であれば、市内の数十社が取り扱っている場合もあります。つまり、大家さんや管理会社が多くの不動産会社に声をかけて入居者募集を依頼しているということです。そのため、仮押さえは他の不動産会社にも迷惑をかけている可能性があることをぜひ知っておいてください。

 もし、どうしてもすぐに決断できない場合は、担当者に相談してみてください。状況に合わせて、スケジュール調整や他のお客様への対応などを提案してくれるかもしれません。

 なお、仮押さえ的に取り扱われる(口頭や書面で「申込みをした」とみなされる場合)と、物件によっては審査通過後にキャンセル料が発生する可能性もあります。特に人気物件や繁忙期では、大家さんが他の入居希望者への対応を止めてしまうため、違約金(キャンセル料)を請求される場合があります。
正式な申込書の提出時や契約前に、不動産会社に「キャンセル料が発生する可能性があるかどうか」を必ず確認するようにしましょう。

仮押さえが入っていると——
・二番手のお客様が不安になる
・大家さんや不動産会社の業務負担が増える

違約金、契約解除、キャンセル

【2】入居申込書でよく求められる情報
基本情報(氏名・年齢・住所)

大家さんが申込者と契約するか否かは、下記の事項をチェックします。

①勤務先や収入、勤続年数

 家賃を支払ってもらうには、収入が必要ですね。
収入が無くても多額の預貯金があるのなら別ですが。

 一般的には、『家賃の3倍の収入が必要』と言われています。生活をするには、家賃の他、水道高熱費、食費、交通費、医療費、通信費などがかかりますから、賃料にもよりますが3倍では足らないケースもあるでしょう。ただし、生活費の状況は人それぞれなので、あくまで目安です。

 勤続年数については、当然ながら長い方が好印象ですね。新卒社員でもない限り、転職がきっかけで部屋を探す場合、大家さんにとっては、もし新しい職場で続かなかったらまた退去してしまうかも、という不安要素と映るからです。

会社、勤務先、勤め先

②希望入居日

 物件を内覧して申し込みをするときには入居希望日を記載します。入居日というのは部屋の鍵を受領して、その日から自由に部屋を使用できるという意味で、実際にそこに住み始めるかどうかは別問題です。

 大家さんにとっては、その日から日割家賃がもらえるという意味で、重要な意味合いになります。そのため、入居日をあまりにも先の日に設定すると、お断りの理由にもなりかねません。

 例えば、3月中旬に物件を申し込みして、入居希望日が6月中旬だったとします。契約手続に1か月要したとしても、それでも2か月間は空室状態となりますので、大家さんによってはもう少し早く入居してくれないかと考えられることもあります。

 一般的には、入居申し込みをしてから1か月~1か月半くらい先を入居日(家賃が発生する日)として設定することが多いようです。3月中旬に申し込みをしたなら、4月末日が期限といったところでしょうか。

期限、入居日

③お名前、現住所、年齢、連絡先

 これは大家さんにとっては当然聞かなければならない情報です。どこの誰に貸すのかは重要な判断基準ですから。

 名前や連絡先は書けるとして、問題は現住所。たまにいらっしゃるのが、身分証明書と現住所が一致していないお客様。この場合は今実際に住んでいる住所を記載するのが基本的なルールです。

 それは、近年では連帯保証人を立てて契約することは稀で、たいていの場合は保証会社との契約を条件としています。

 保証会社はあなたと契約し、大家さんに毎月の賃料を立て替えて支払ってくれ、あなたは保証会社に賃料を支払うわけです。万が一、保証会社に滞納すると滞納履歴として残るほか、3か月以上滞納が溜まると契約解除の手続きに入ることになります。

 その保証会社の審査時に、本人確認と過去の滞納履歴等を確認するために身分証明書が必要となります。

 身分証明書と現住所が一致しない場合は、現住所の電気・水道・ガスなどの公共料金の明細を提示することで確認の一助となります。このような情報を提出するのは手間ですから、一番良い方法は身分証明書の現住所を変更する手続きを、お部屋探しの前までに完了しておくことです。

電気料金、明細

④転居理由

 大家さんとしては、『なぜ、うちの物件に引っ越すの?』という疑問が真っ先に浮かびます。前に住んでいた物件で何か問題を起こしたのではないかとか考えてしまう大家さんもいらっしゃいます。

 転居理由の代表的なものとしては、結婚、就職、転勤、転職、(実家からの)独立、離婚、別居、などが代表的です。他には、会社から遠いから、(両親の面倒を見るため)実家の近くに、趣味の部屋として、書斎として、今住んでいるアパートの家賃が高いから、子供が生まれて手狭になったから、など様々です。

 実際には、細かい不満や騒音のことまで書く必要はありません。仮に書いて申込書を出したとして、良心的な大家さんなら上の階にお子様がいるかどうかなど教えてくれることもあるかもしれませんが、今は個人情報に敏感な時代ですので難しいでしょう。また、神経質な人だなと判断されてお断りの原因になることもあります。

引っ越し、転居

【3】入居審査をスムーズに進めるコツと対策


・書類提出のスピード

・連絡先をきちんと伝える

・担当者とのコミュニケーション

・担当者とのやり取りでも、誠実さを意識

① 必要書類は早めに準備しておく
 入居申込書、身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード等)、収入証明(源泉徴収票、給与明細など)をすぐに提出できるように準備しておきましょう。審査がスムーズに進み、大家さんへの印象も良くなります。

② 連絡がつきやすい状態を保つ
 申込書を提出後は、不動産会社や保証会社から確認の連絡が入ることがあります。電話やメールが届いたら、できるだけ早めに折り返すと誠実な印象を与えられます。

③ 転居理由は簡潔かつ前向きに
 転居の理由は、あまりにネガティブに書くと大家さんが不安を持つ場合があります。例えば「実家の近くに住みたい」など前向きな理由を添えると好印象です。

④ 担当者と良好なコミュニケーションを
 担当者も大家さんに対して「このお客様なら大丈夫」と思えるよう、丁寧なやり取りを心がけましょう。聞きたいことがあれば遠慮なく質問し、誠実に受け答えするのがポイントです。

ポイント:「印象=審査。会話や書類のやりとりにも気を配ろう」


【4】よくある不安Q&A

Q1:入居審査ってどれくらい時間がかかるの?

 →A:即日~数日です。審査の混雑状況や保証会社の混み具合によって変わることもあります。

Q2:入居申込書に書く「緊急連絡先」は誰でもいいの?

 →A:原則、お身内です。ご両親、ご兄弟、親戚など。3親等以内が原則。場合によっては友人や職場の上司が受け付けられるケースもありますが、大家さんの安心感のためにもご家族が望ましいです。

Q3:申し込みのタイミングで職場の在籍確認はあるの?

 →A:社会健康保険証の写しをもって確認することがほとんどです。保証会社利用の場合でも、職場へ電話連絡が入るケースはほとんど聞きません。

Q4:申し込んだけど、やっぱり別の物件が気になる…入居申込をキャンセルするとキャンセル料はかかる?

 →A:申し込み後の変更は、なるべく早く担当者に相談を。トラブルにならないよう配慮が大切です。審査通過の連絡を受けた後には、キャンセル料がかかる可能性もあります。ただし、審査が通過して正式契約目前の場合は、大家さんや管理会社の判断でキャンセル料が発生することもあります。心配な場合は、必ず早めに不動産会社に相談してみましょう。

Q5:年収が少なめなんだけど…年収が低めでも審査に通る可能性はあるの?

 →A:保証会社の利用に加えて、連帯保証人を選定することで柔軟に対応してくれるケースもあります。ただし、家賃と収入のバランスや勤続年数など総合的に見られることが多いので、事前に相談してみると安心です。

Q6:保証会社の審査って何を見られるの?

 →A:主に家賃の滞納歴や信用情報(過去の支払い状況)などが審査対象になります。

Q7:入居日って絶対に守らないといけないの?

 →A:事前に不動産会社を通じて大家さんに連絡しておけば問題ないです。


まとめ

入居申し込みの手順

 申込書の記入と身分証の提出から始まり、大家さんの審査を経て契約へと進みます。

仮押さえの注意点

 物件を「仮押さえ」する行為は、大家さんや不動産会社に迷惑をかける可能性があります。特に繁忙期は空室リスクが高まり、最終的に違約金が発生する場合もあります。どうしても決断できない場合は、担当者に相談してスケジュール調整を検討しましょう。

入居申込書でよく求められる情報

 氏名、住所、年齢、連絡先に加え、勤務先や収入、勤続年数、入居希望日、転居理由などが審査で重視されます。特に身分証と現住所の不一致がある場合は、公共料金の明細書で証明する必要があります。

入居審査をスムーズに進めるコツ

 必要書類を早めに準備し、連絡がつきやすいように心がけ、転居理由は簡潔かつ前向きに伝えましょう。担当者との良好なコミュニケーションも大切です。


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